商業史レポート@ 「商業の発展と豪商の繁栄」


11.江戸時代の豪商たちA


【中井源左衛門】

 近江商人。十九歳で薬の行商を始め、二十九歳で下野国に質店を開業した。以降、各地に支店を開設する。その数、十五店に及び、加えて、仙台伊達藩の米方御蔵元の御用商人などに任ぜられた。世界初の複式簿記を考案したとされる人物でもある。九十歳の天寿を全うし、「金持商人一枚起請文」を遺している。


【高田屋嘉兵衛】

 淡路島の出身。廻船業者。幕命により択捉島を探検し、その後、蝦夷地定雇船頭として、根室などの漁業請負を命じられる。文化九年にロシアに拿捕され、カムチャッカに連行されたが、両国の平和を説き釈放された。


【銭屋五兵衛】

 加賀の豪商。質屋や古着、それに呉服といった家業を継ぐ身であったが、質流れとなった百二十石の古船を修復して、海運業を始める。その後、全国に三十数店にも及ぶ支店を開設。海運業の他、木材や生糸、海産物、米穀の問屋も兼ねるようになり、保有した船も大小二百隻余りと言われる、屈指の大廻船業者となった。朝鮮半島、中国大陸、ロシアなどとの密貿易で莫大な利益を上げ、加賀藩への貢献も大きかった。しかし、晩年、河北潟干拓事業に着手したものの、潟で死魚や死人が続出したため捕らえられ、嘉永五年に獄死した。


【飯田新七】

 高島屋の創始者。越前国敦賀に生まれ、十一歳の時、京都の呉服商に奉公する。二十五歳の時、京都烏丸松原で米穀商を営む高島屋・飯田儀兵衛家の長女、秀と結婚して、同家の婿養子となり、二十八歳で分家。本家と同じ「たかしまや」の屋号を用いて、烏丸高辻で古着商を始めた。


【その他の豪商・商人たち】

◇後藤庄三郎 … 大判・小判を作る幕府の公共事業を請け負う。
◇淀屋辰五郎 … 淀屋最後の当主。幕府により所払い・闕所となった。
◇住友友芳 … 住友家五代目当主。別子銅山を開発。住友家を再興した。
◇岩垣光定 … 「商人生業鑑」の著者。
◇西川如見 … 長崎居住の町人学者。専門は天文学だが、「町人嚢」を著した。
◇伊能忠敬 … 日本地図の測量で有名であるが、元は商人であった。
◇蔦谷重三郎 … 耕書堂を開業。東洲斎写楽・喜多川歌麿・山東京伝を大成させた。


前ページへ戻る 次ページへ進む